醇風

 大矢鞆音「田中一村 豊饒の奄美」NHK出版2004年を読んだ。著者の父と兄弟が画家という環境のゆえだろう、一村の作品への鮮やかな深い切り込み、一村を巡る日本画壇の世界も垣間見える。平明な文章で一村の生い立ちから若き日の悪戦苦闘、そして奄美での或る意味平穏にして充実したな晩年を、身近に接した人々の回想を軸に温かい筆致で丹念に辿っている。それにしても一村は若き日は米邨と名乗っていた。小原古邨を連想させる。どちらも結局日本画壇とは無縁になり、亡くなってから名が知られるようになった。無風のなかを二人は亡くなった。が、田中一村奄美の醇風のなかで没したといえるだろう。最終頁から。

「きわめてデザイン的とも見えるフラットな画面を構成したところに、一村の『和風モダン』ともいえる味がある。時代が一村に追いついたのだろうか、今この『和風モダン』の味に、人びとは魅きつけられてやまない。」

 世の中、何に出くわすかワカラナイ。きょうはショートアニメうんこさんに遭遇してしまった。