青年の環

 野間宏「青年の環」の最終巻、「第五巻 炎の場所」河出書房1971年を読了。八千枚におよぶ重厚長大な長編小説、最後まで飽きることなく読み終えた。メガトン級とも評され、、超ど級とも言われ、私は重戦車五台が横並びに轟音をたてて突き進んでいる、と三十年前に感想をもったこの小説、再読し、あらためてその凄さを実感。壮大な構想と緻密な構成の上に、登場人物の内面と言動が余すところ無く濃密に、息詰まるほど綿密に描かれている昭和十四年の夏、大阪。ぐっと腰を据えてかからないと、弾き飛ばされてしまうかも。ドストエフスキーも凄いが、野間宏も凄い。北一明氏の耀変茶碗を連想した。分厚い釉薬の掛けられた、一見、濃紺、漆黒と見える茶碗が、光の照射によって突如、金銀色、深い虹、一閃の雷光を幻出せしめる、その現実。まさしく炎の場所。こんな小説、こんな茶碗は空前絶後ではあるまいか。後に続く者がいたら、それはそれで凄いことだ。

 ブックオフ長泉店で三冊。加納朋子「スペース」東京創元社2004年2刷帯付、「寺山修司少女詩集」角川文庫2004年20刷、ローレンス・ブロック「タナーと謎のナチ老人」創元推理文庫2008年初版、計315円。「寺山修司少女詩集」は「不当・不適切と思われる語句や表現がありますが、時代的背景と作品価値を考え合わせてそのままとしました。」とあるので買う。