全体小説

 野間宏「全体小説と想像力」河出書房1969年をから「『青年の環』について」などを拾い読み。

「そして私は小説作品の全体が、虚の世界と磁場の世界の統一されたものであるというところに行きついたのである。虚の世界というのは、原稿用紙のいまだ言葉をもって埋められていない空白のところに見えている世界のことであり、磁場の世界というのは、原稿用紙のすでに言葉をもって埋められ、そこにいろいろの人物と人物の置かれているさまざまな状況が置かれているところに見えている世界のことである。」274頁

「小説の全体はこの磁場の世界と虚の世界の統一されたものであり、すでに実現されて言葉の埋めつくされている作品全体にも、まだ、依然として空白の虚の世界のうちにあったもの、つまり構想として動いていたイマージュを生みだす想像力が生きて働きつづけているのである。原稿用紙は埋めつくされているといっても、そこには、行と行の間に、また一字一字の言葉と言葉の間に、空白があるわけであり、そこに空白の虚の世界は、残されているのである。」275頁

「私は小説の全体についての問いを問いつづけ、その問いに支えられるようにして、『青年の環』を書きつないで行ったのである。」275頁

 インタビュー「文学創造の秘密」に野間宏のこんな返答。

「その人、旋盤工でしてね、当時、ミシンの糸を巻いた駒みたいなもの(引用者:注 ボビン bobbin のことだろう)がありますね。それの両端の山のところにギザギザを作って、ロウソクを輪切りに切って、それにつけて、そのなかにゴムの紐を通して、箸でとめて、そのゴム紐をねじってそれでそのタンクと称するものを、動かし、たがいに衝突させてあそぶのがありました。」286頁

 う−ん、そのギザギザを作れなくて残念無念の思い出。その木製ボビンのデカイもの(輪の直径9センチ、幅15センチ) を昨日、旋盤工もしている年配の知人から頂いた。絨毯の織機に使われたもの。これでタンクを作る? デカ〜イ。ガンダム級だ。

 午後、源兵衛川の月例清掃へ。七人参加。一汗流して午後三時、美術館再び開館。昨日来館された御殿場市の方がお友だち二人を連れて来館。来てよかったと感想を述べられる。疲れが消えるねえ。