形姿

 昨日、この夏初めて全館冷房をした。きょうも昨日同様晴天暑い。全館冷房。まだ梅雨の中休み?

 篠田一士「日本の現代小説」集英社1980年を拾い読み。

「スピーディに動く現代という時代でも、物事が革まるためには一世代三十年という時間がどうしても必要らしい。」205 頁

 一昨日書いた「三十五年」を思う。以下の小説論、美術作品にも通用すると思う。

「小説が作品たりうるとするならば、その作品は、かならず形式をもつ。そして、形式は、それを要求し、それによって表現として実現される内容を前提とする。いや、作品を経験するわれわれにとって、それが経験の名に値するものならば、形式と内容の分離は到底ありえないはずだから、これをぼくは形姿とよぶことにしている。」202頁

「なぜ駄目か、理由は簡単、『私小説』には構成の原理が働いていない、いや、働かそうとする意志の気配すら認められないからという一事につきる。構成の原理が働かないところに、作品は成立しない。」204頁

「ロマンを読む楽しみとは、畢竟、この時間のなかに身を浸すよろこびにほかならない。」244頁

「やはり、小説、とりわけロマンには無為なところがなければならない。無意味なのではない。無為な部分があってこそ、構成の堅牢さもはじめて腰がすわってくるし、(略)より豊かに生かされているのである。」245頁

「ことごとしい抽象化はなるべくさ避け、具体に即し、実地につくというのが、ぼくの批評の眼目である以上、いたずらに原理化をもとめるあまり、空疎な抽象論に終始することは、われひとともに、かたく戒めたいと思う。」210頁

 ブックオフ長泉店で二冊。有栖川有栖「朱色の研究」角川書店1997年3刷帯付、皆川博子「ゆめこ縮緬集英社1998年初版帯付、計210円。前者は依頼本。