西東洋・東東洋

 昨日買った藤原新也「全東洋街道(上・下)」集英社文庫をめくる。四半世紀ぶりに読んで記憶がまるごと抜け落ちている箇所に出合った。この旅はギリシャアテネを出発してトルコ〜シリア〜イラン〜パキスタン〜インド〜チベットビルマ……日本へ着くのだけれど、シリア〜イランあたりの章「イスラム思索行」の記憶がすっぽり抜け落ちていた。あまりにも違う=真逆の世界のせいなのか。著者は東洋をインドで東西に別ける。すなわちヒンドゥ教・仏教の東東洋とイズラム教の西東洋に。数万年にわたって旱魃と冷害が繰り返された土地に生まれたイスラム教。そのあからさまな相違点を彼は挙げてゆく。

  西東洋の鉱物的世界──イスラム世界。
  東東洋の植物的世界──ヒンドゥ・仏教世界。

「何と多くのことが対立していることか。」

「東東洋では微笑は憎悪を制することができる。ここでは憎悪は憎悪によってのみ制することができる。/ここでは敵と味方の両極しかない。(略)彼らの眼に怒りの色が見えるのは保身術である。単純に怒っているとみなすのは早計である。」

「負けるが勝ちという仏教的保身術は成り立たない。/勝つことによって勝たねばならない。」

 気が遠くなるほど違う。

 ブックオフ長泉店で三冊。清沢洌「暗黒日記 III 」評論社1973年初版、田中小実昌「コミマサ・ロードショー」晶文社 1980年初版、都筑道夫「サタデイ・ナイト・ムービー」奇想天外社1979年初版、計315円。