本日は開館/「ラスト・タイクーン」

 午前十時半に、はや来館者。開けてよかった。お昼過ぎに来館された若いカップルが感想ノートに記した言葉。

「美術館好きで、ここは初めてでしたけど、小さいからこその空間、雰囲気が心地良かったです。」

 昨日の続き。映画「ラスト・タイクーン」について。タイクーンとは田中小実昌によると「中国の大君で、専制君主の意味につかっている。」「これは、ハリウッドの大専制君主タイクーン)の映画」「ラスト・タイクーンというのは、ハリウッドでの最後(ラスト)のタイクーンってことで、もっともっと、そのタイクーンぶりが見たかった。男と女のことなんか、ほかの映画で見あきてるんだもの。」と書いて田中は続ける。

「ぼくが、そうざんねんがると、作家の都筑道夫さんが、おもしろいことを言った。じつは、この映画は、あんまり製作費をかけていないのではないか、と。/タイクーンぶりを示すのには、ものすごく金をかけたスペクタクル映画の製作過程を見せればいい、と都筑さんは言うのだ。」

 都筑道夫の評。デ・ニーロが切れものの制作部長=タイクーン役。ロバート・ミッチャムが撮影所長役。

「こういう充実感のある映画を見るのは、久しぶりだ。」

「デ・ニーロを愛している撮影所長の娘が、彼に冷たくされて、所長室に泣きにいくと、そこでは父が美人秘書を裸にしてたわむれている、というシーンも、むずかしい場面を脚本がうまく書いていて、複雑な無表情で立ちつくすミッチャムもいい。」

 ブックオフ長泉店で二冊。大沢在昌「魔女の盟約」文藝春秋2008年初版帯付、山田正紀「螺旋(スパイラル)」幻冬舎ノベルス1997年初版、計210円。