昨日買った青木雨彦「大人の会話」。冒頭に虫明亜呂無(むしあけあろむ)の言葉が紹介されている。
「話しているだけで、寝ることまで連想させてくれる女性というのは、男にとって最高の魅力ある女性ではなかろうか」
周囲の女性を思い浮かべる……(書けねえ書けねえ)。以下の科白はいつか使ってみたいが、未婚ではなあ。
「結婚? 結婚というものがこんなにいいものなら、あとニ、三回はしてみたいよ」
「三番目の趣味」から。
「たとえば『趣味は?』/と訊かれて、/『編みもの』と答える。」
「『なぜ?』/『あのねえ、いちど電車の中でやってごらんなさい。電車が揺れるたびに隣の人の目を突きそうになって、そりゃあ、面白いから……』」
「あなたって悪がしこい男ね」「ぼくはたまたまきみにほれている、悪がしこい男さ」「じゃあ、あなたはただのばかな男だわ」
「くすぐったいこと」から。
「『もう酒はつつしもうと思う。どうも体によくない』
と言った人がいる。ふたたび、ひそかに敬愛する山口瞳さんである。/とたんに奥さんの瞳が輝いた。すると、山口さんは言ったのである。
『それで、今年から女にきりかえる』」
副題に「ミステリにおける男と女の研究」とある青木雨彦「課外授業」講談社文庫1980年初版の最終章は「小説『ミスター・グッドバーを探して』における未婚の研究」。
「恥ずかしい話だけれど、いい小説を読んだあとは、いつもこうなのだ。むしょうに肌恋しくなって、電話をかけてしまう。」
青木は「あとがき」で丸谷才一の言葉を紹介している。
「かつては、寝ないことがフェミニズムであった。そして今は寝ることがフェミニズムなのである」
解説を小泉喜美子さんが書いている。この著作は1978年の日本推理作家協会賞を授賞した。
「彼のような柔軟な眼を持つ人間にこそミステリは読んでもらいたいと私は思っていたから、この受賞には心から拍手を送った。/もっとも、彼は私の拍手なんかよりも、受賞式の夜、花束を持って現れた松阪慶子のほうばっかり向いていた。メンクイめが。」