Try the other hole

 昨日の続き。米原万里対談集「言葉を育てる」ちくま文庫は、引用したい箇所が富士山の樹海のようにある。で、頂上の冠雪部分を。免疫学者・多田富雄の発言。

《私は脳っていうのは嘘つくようにできてるんだと思うんです。すごくもの憶えのいい老人がいて、昔のことをよく憶えてると言いますね。あれ完全に真実じゃありません。追憶を繰り返しながら、自分で作り出した記憶をため込んでるんです。自分で作り出した話が記憶になっている。》119頁

 そうだよなあ。

《先生の「女は存在で男は現象だ」という定義には、飛びつきましたね。》

 と米原万里は言う。彼女の得意なダジャレを真似て「女はぞんざいで男は減少だ」。

 第三部はイタリア語通訳のエロス派田丸公美子とシモネタ派米原万里の五つの対談。シモネタ、ガセネタ大放出。笑うしかない。米原のシモネタを簡略に。

 戦乱のアフガニスタンアメリカ軍と政府軍は、テロリストが潜んでいる山岳地帯の無数にある洞窟を捜索。一つ検分すると、"Try the other hole"(次の洞窟に行こう)と現地人の通訳を介して政府軍兵士に伝える。アフガニスタンは最貧国だけれども、桁違いの大金持ちもいる。そんなお金持ちのビン・ラディン夫妻は、不妊治療のため、アフガニスタン人通訳をつれてアメリカへ行った。高名な医者でも原因不明。最後の手段で医者は「ご夫婦はベッドでどうやっているのか、見せてくれ」と通訳に言った。夫妻はしかたなく実演した。医者は納得して処方箋を通訳に渡した。それにはこう書いてあった。"Try the other hole"(別の穴に挑め)。

 午後、三島テレビ放送の取材。来月、展覧会中に放送できるという。よかった。NHKテレビ日曜日、素数を話題にした番組で「非可換幾何学」なる用語に出合った。ウィキペディアを見て、なんじゃこれ、難解を通り越して理解不能。ハハハ〜ア。

 ブックオフ長泉店で二冊。リチャード・ハフ「戦艦ポチョムキンの反乱」講談社学術文庫2003年初版、スタニスワフ・レムソラリスの陽のもとに」ハヤカワ文庫2006年31刷、計210円。