小雨、深秋

 昨夜、NHKテレビ「SONGS」の井上陽水を観ようと早めにつけたら、「熱中時間」なる番組。青森県の舞踏熱中人が出ていた。彼の応援団として歌手のあがた森魚が出演。バックに彼の出世作「赤色エレジー」が流れていた。うーん、懐かしい。懐かしいという言葉、日本独自の言葉ということを米原万里対談集「言葉を育てる」で知ったけれど、懐かしいわあ。1972年、学生時代に池袋芳林堂で購入した本の体裁をしたEPレコード「赤色エレジー」を手にする。夏目房之介「青春マンガ列伝」マガジンハウス1997年、「赤色エレジー」の章を再読。夏目は私と同い歳、生きた現場が重なっているので、いたく親近感を感じる(米原万里とも同い歳だが、生きた現場はまるで違う)。

《林の描く女の子の姿態は、とにかく無闇にせつない。》161頁

《わずか数コマの画像が訴える、やり場のない男と女の苦しさ。》163頁

 吐く息が白いこんな小雨まじりの寒い日には、不意に懐旧の情に耽ってしまう。林静一氏からは二週間ほど前に味戸ケイコさんのことで問い合わせ。

 二階の北一明作品に一般の人が親近感を感じられる解説文の設置が完了。茶碗の並べ方も変えて随分見やすくなったと思う。来館者の反応もよい。これからは解説文のさらなる見直し。来年個展をする予定の北斎道子さんに頼まれたキャッチコピーを郵送。まだヒミツ。そのことで友だちの知恵を借りた時、結局、品があるかないか、が美術品の価値を左右するね、と考えが一致。省みて、自分には品があるかな……反省。