12月14日(月) 休館日

 舟橋聖一「好きな女の胸飾り」講談社1967年初版を再読。これは面白い。何年か前に再読したけれど、今回その本質をやっと把握できたような。人妻をめぐるその夫と年下の男友だちの危険な関係。これはロマネスク小説の傑作ではなかろうか。みごとだ。

≪あのときの気持ちは、美しい蒔子のために、ここで滅亡しても悔いないほどの熱情に駆り立てられたものだ。たしかにそれはロマネスクであった。しかし、小説を地で行ったからと言って、ロマネスクだという逆説は成立しない。どういう世界の女であれ、女は小説的であると同時に常に、利己的であり、そのストーリーの土壇場では、いつまでも非ロマネスクとなるものである。そのことが森男にはわかったのであった。≫356頁