いかにも冬空

 初冬だ。曇天の寒空。「吉田一穂大系 第三巻」にも収録されているが、季刊「おべりすく」2号「吉田一穂童話特集」1974年にも採録されている「わが絵本考」から。

≪童画とてその芸術性に於ては、美術一般の原則と反する何等の特例はない。絵とは何か、と画家自身の内に問はるべき答えは、絵として芸術たること以外にない。即ち、二次元の逆限定として、自然からの完き分離に於て表現の世界に独立な一個の新しい現実を創造することである。そして芸術たるの秘密は、畢竟、構成布置の弁証法的対位法にある。それを生動づけるイデェとは画家の特定な意志の方向軸にとりあげたテエマであり、その具体的な実現の方法とは構成法則の適用にあるのである。≫