地震地震地震

 昨夕から伊豆半島東沖で連続地震。今のところ本の山は崩れていない。やれやれ。それにしてもきょうは風強く寒い。昨日の西東三鬼の句に呼応して塚本邦雄が創った短歌。

  高度千メートルの空より来て卵食ひをり鋼色の飛行士

 昨日の水尾比呂志「美の終末」は、「現代日本文學大系 97」筑摩書房1973年初版に収録されたもの。元本の「美の終焉」筑摩書房1967年を当時本屋で見て、買えずじまいだった。ブックオフでこの大系を買い、長年の渇がやっといえた。昨日の引用文に続いて水尾は書く。

≪作者の人間性や個性は、ある状態において純化されて美という性質に高まることはあるけれども、つねに美そのものであることはない。このことを、私たちは永い間錯覚してきたのではなかろうか。≫

≪自然の美の本質は、美醜の対立を超越したところにある。自然には醜いものがない。醜いものに対する美しいものがあるのではなくて、どんなものもそのままの性質において美しいのだ。この超越性の故に自然美は究極の美であり得る。≫

≪造形作品の表面的な形式や化粧に惑わされずに、無心に見つめて感じとる美の性質は、古いものほど深い。美しいのである。≫

 と記す水尾は「人間の歴史は自我の増大してゆく歴史である。」その果てに「現代の煩悩は、意識とか自我とかを通り越して、自我意識自体を壊滅するまでになっている。」と断じる。そして結ぶ。

≪美の終焉は、それが決して白昼の幻想にとどまらぬことを語っているように思われるのである。≫

 1965年にこの論文が発表されてから四十四年、あと数年で時代は転換=反転すると、予想するが。