山折哲雄「日本人の情感はどこからくるのか」草思社2003年初版を読んだ。軽い雑文集という予想は、読み進めるにつれてみごとに覆った。卓見、創見にワクワクする。例えば「日本の原理主義テロ」の章の一向一揆。
≪それは信長の覇権主義にたいする正面からの挑戦だった。阿弥陀如来の宗教シンボルを押し立ててたたかう、もう一つの「十字軍」戦争だった。≫111頁
例えば「十字と卍字」の章。
≪十字やX字は空間を切断する標識であるが、卍字や卍(逆向きの卍だが、変換できない:引用者)字は空間を統合する標識である。前者は垂直的世界と水平的世界を交錯させ、後者は同心円的循環の世界を暗示する。十字架の十字象徴にもとづいて形成されたキリスト教が、歴史や自然を進化もしくは退化という直線的な思考法(たとえば終末観)によってとらえようとしたのは、たんなる偶然ではなかったのだ。それにたいして仏教やヒンドゥー教のインド文化の伝統が、同じ歴史や自然の移り行きについて循環と転変の契機を重視する円環的思考法を生み出したのも不思議ではない。≫127-128頁