銀河と共に 西へ行く

K美術館へ車で初めて来る人は、東へ西へちょっと行き過ぎてしまう。幹線道路からほんのちょっと入ったところだから、車で走ると見逃してしまうみたい。それにしても、今朝はきのう同様寒かった。畑はきのうと同じく霜柱いっぱい。

 山折哲雄「日本人の情感はどこからくるのか」草思社2003年、「銀河と共に西へ行く」の章は、高浜虚子の俳句について。その冒頭。

≪虚子の

  虚子一人 銀河と共に 西へ行く

 をはじめて目にしたときほど、びっくりしたことはない。≫

 そして9.11自爆テロを見て山折哲雄の思い浮かんだ句。

  虚子一人 自爆テロの中 西へ行く

 この虚子の句が、山本健吉「基本季語五○○選」講談社学術文庫角川書店編「合本俳句歳時記・第三版」にも収録されていないのは≪どうやら嫌われていたのかもしれない。それとも、たんなる偶然の仕業だったのか。≫と記しているが、手元の平井照敏・編「現代の俳句」講談社学術文庫1993年初版、「鑑賞現代俳句全集 第一巻」立風書房1981年初版、夏石番矢「天才のポエジー邑書林1993年初版には収録されている。

≪その虚子のいう「西」は、おそらく西方浄土を指しているのではあるまい。そう疑ってみたくなるほど、その西は常軌を逸している。≫山折哲雄「日本人の情感はどこからくるのか」192頁

≪これらの秀作において、虚子はそういう天地の情と融け合い、造化の命と交響しようとしている。花鳥諷詠のエッセンスのような俳句ではあるまいか。/虚子のこの雄渾なる生命的自然観は、焦点距離が大きすぎて、反虚子論者たちはもちろん、弟たちも容易についていけなかったようである。≫大峯あきら「鑑賞現代俳句全集 第一巻」197頁

≪虚子の原志向には、社会的な諸関係や他者を忘れようとする欲求がひそんでいたとも考えることができるだろう。したがって、虚子の俳句においては、「一人」あることは決して孤独を指すのではなく、自由を示すのであった。≫夏石番矢「天才のポエジー」118頁

 ふううむ。高木彬光「幽霊西へ行く」角川文庫1986年初版を読む。これらのほんと共に西へ行く→K美術館。