昨夕帰りがけにブックオフ長泉店で三冊。江國香織「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」集英社2002年初版帯付、海音寺潮五郎「人生遍路 華厳経」河出書房新社2003年初版、E・リーボウ「ホームレスウーマン」東信堂1999年初版帯付、半額セールなので計156円。
平石貴樹「フィリップ・マーロウよりも孤独」講談社1986年初版を読んだ。推理小説ではなく現代小説だった。女子大生の独り語り(小説体)で、知人の年上の男(オニイ)の隠された過去、十五年ほど前、オニイが関わった全共闘の時代に起きた事件の謎の追求を軸にして進む。
≪──あたしはけっきょく、自分が何をしているのかよくわからない。オニイの究明、事件の真相をあかすこと、とりわけあたしの現実にとってそれが何なのかあたしにはわからない。この点であたしはフィリップ・マーロウなどより断然孤独だ。そう思った。あたしには依頼人さえいないのだ。≫122頁
≪本物のミステリーの探偵なら、過去の調査を踏まえつつ、最後にはやはり犯人の現在を追いつめ、突きとめ、対峙するはずだ。過去にだけとらわれたリュウ・アーチャーなんて、友人のあいだだけ嗅ぎまわるフィリップ・マーロウなんて滑稽なだけだ。犯人とはあくまで現在形のコトバである。≫212頁
リュウ・アーチャーはロス・マクドナルドの推理小説の主人公(語り手)、フィリップ・マーロウはレイモンド・チャンドラーの推理小説の主人公(語り手)。語り手の女子学生と彼女の片腕となって動く友人の大学生とのキス。
≪隔たりを確かめるかのような小さなキス。≫157頁
塚本邦雄の短歌を連想。
五月祭の汗の青年 病むわれは火のごとき孤独もちてへだたる
きょう知った新しい言葉。ニーティスト(ニート+アーティスト)。自称ニーティストはそこらじゅうにいるなあ。