春……の嵐。

 昨日、待ち合わせ時間に余裕ができたので、近くの古本屋で時間調整。気になっていた「プレヴェール詩集」河出書房 1967年栞付初版を購入。250円。今朝は雨なのでバスに乗るつもりが小止みになったので徒歩で来る。これで200円得した。 250円−200円=50円……なんだかなあ。不意に沈丁花の強い香りに包まれた。歩いていたから感じられた早春の香り。このプレヴェール詩集は小笠原豊樹の香り高い訳。じつにいい。昨晩読み始めてきょう一冊読み終えてしまった。読み始めると止まらない。寺山修司の詩の上澄みのようなおいしい印象。なによりも小笠原豊樹の訳がいい。有名な「夜のパリ」。最初の一行と最後の一行。

≪三本のマッチ 一本ずつ擦る 夜のなか≫

≪きみを抱きしめながら≫

 高名な詩人の訳の同じ箇所。

≪闇の中でひとつずつ擦る三本のマッチ≫

≪あなたをじっと抱きしめながら≫

 シャンソンでもジャズでも有名な「枯葉」。小笠原豊樹の訳。

≪それはぼくらにそっくりの唄/きみはぼくを愛し ぼくはきみを愛し/ふたりでいっしょにくらしたね≫

≪海は消す 砂の上の別れたふたりのあしあとを。≫

 高名な詩人の訳の同じ箇所。

≪それはぼくらにそっくりな唄/きみはぼくに恋し ぼくはきみに恋した/ふたりはいっしょに暮らした≫

≪波は消してゆく 砂の上 別れた恋人たちの足跡を≫

 ジャック・プレヴェールの詩の口ずさみたくなる歌謡性を、小笠原豊樹は日本語にみごとに移している。小笠原の解説に「プレヴェールのシャンソンを世界中の町角に流したジュリエット・グレコ。」という写真があったので、昨夜は「枯葉」などを収録したグレコのLPレコードをかけながら読んだ。切々としびれる。

≪「ことば」その他の詩集がベストセラーになったことを指して、批評家は「プレヴェールの奇蹟」などと言います。けれどもこの人の詩が広い愛好者の層をもつことは実は奇蹟でもなんでもありません。プレヴェールの詩を読んで味わうには、なんらかの予備知識や、専門的知識や、読む側の身構えなどがほとんど全く不必要であるからです。プレヴェールの詩はちょうど親しいともだちのように微笑を浮かべてあなたを待っています。それはいわば読む前からあなたのものなのです。≫「解説」より

 ネットの拾いもの。

≪「付き合ってくれない?」

 「一日いくら私につかってくれるの?」

 「・・・」≫