三つのトイレ殺人事件

 某ミステリブログで以下の文面に出合った。

≪20世紀最後の10年の三大傑作は『ウロボロス偽書』『夏と冬の奏鳴曲』『魍魎の匣』(刊行順)≫

 京極夏彦魍魎の匣」は傑作だった。昨日買った二作よりも出来がいいと聞いている。前二作、竹本健治麻耶雄嵩のは持っているけど未読。前二作には異論が出そうだ。ミステリの三大傑作は小栗虫太郎黒死館殺人事件」、夢野久作ドグラマグラ」そして中井英夫「虚無への供物」と言われているけど、これには同意。

 辻真先「仮題・中学殺人事件」創元推理文庫2004年初版を読んだ。これは1972年に出版された辻真先の処女長編ミステリ。若い人向けに書かれているので、筋は軽快に進む。だからといって軽いだけではない。軽快にして本格。三つの殺人事件が起きる。二番目の中学校の密室状態のトイレで女子中学生が殺された事件から他のトイレ殺人事件を連想した。ジョン・スラデック「見えないグリーン」ハヤカワ文庫では密室のトイレで殺される。谷俊彦「東京都大学の人びと」新潮文庫収録の「駱駝市役所の人びと」では市役所の上部の空いたトイレで活性化とあだ名のある課長が殺される。再読。

≪響子はアパートに戻り、不慮の死を遂げた活性化という人物について考えてみた。
(ある意味では典型的地方公務員キャリアと言えるわね。地元の国立大学を出て実家から通勤可能な市役所に就職し、ノンキャリアと同じように公務員の無競争・福利システムにあぐらをかきながら、しかもキャリアである事を利用していくらかの甘い、でも足をすくわれない程度の汁を地元業者から吸い、かつ公選首長や土地の実力者の歓心を買って組織の中でできる限り上に登って退職金のかさ上げとより有利な天下りに期待し、けれど仕事と部下に対してはあくまでも無責任と事なかれ主義を貫く──見事じゃないの)≫

 心性の深〜いところをえぐるドタバタ喜劇。駱駝(らくだ)市役所、これで決まったね。景山民夫が解説で書いている。

≪これほどまで組織と個人の関係を見事に分析し、上質のエンターテインメントに仕上げた作品は、いままでになかったのではないかと思う。≫

 なお東京都大学は「とうきょうとだいがく」ではなく「ひがしきょうとだいがく」と読む。1995年刊行の単行本では題名が「木村家の人びと」だった。

 ネットの拾いもの。

≪おならのつもりだった。

 まさかあんな事になるとは思っても見なかった。≫