4月22日(木) 臨時休館/好色の魂

 一昨日話題にした梅原北明がモデルの野坂昭如「好色の魂」新潮社1968年初版を読んだ。山口昌男の「補遺1 知のダンディズム再考 『エロ事師』たちの精神史」こ登場する人物たちが、「好色の魂」ではちょっと名前を変えて勢ぞろい。梅原北明は貝原北辰(ほくしん)に。これは破格の風雲児が見事に描破された傑作だ。梅原北明は雑誌編集の天才的アイデアマンだ。

≪第一回目の発売禁止を北辰は徹底的に逆にとり、まず三号目は筆禍記念号、表紙は、禁止にいたる役所の機構を双六にしたてて飾り、裏表紙には担当の検閲係、調書作成者、特高課長、看守の名前をあげて馬鹿丁寧なお礼の言葉、裏には「警視庁よりの伝言」と称し、「発禁本も研究のために所持するならば大丈夫、ただし、二冊以上所有した場合は押収されるそうです。故に二冊以上お持ちの方は、直ちに一冊を破棄してください、他人にみせる、ゆずることは不可(いか)んのです」≫96頁

≪文壇知名人にアンケートを出していわく、

「エロ・グロの変態的流行について」
「人生をより無意義に馬鹿々々しく消費する名案」
「今年中に消滅してもらいたいもの」≫113頁

≪この号からコラムをもうけて映画、新劇、文壇人のこっぴどいこきおろしと、ゴシップを紹介し、目次裏には「これ、これ、これを読んで馬鹿になろう、明るい馬鹿に」としるした。≫116頁