遺品

 昨夕帰りがけにブックオフ長泉店で二冊。森毅(もり・つよし)『数学の歴史』講談社学術文庫2002年21刷、森茉莉・他『遺品 逸品』光文社知恵の森文庫2006年初版、計210円。後者は50人による50品が紹介されている。森茉莉は父森鴎外の「麦酒(ビール)のジョッキーと葉巻切り」といった具合に、遺族にとって想い出深い遺品が多い。よって、あ、これ欲しい、と思わせる品は見当たらなかった。逸品というようなものは、形見分けなどして散逸したのだろう。

 勝海舟の玄孫にあたる女子大生は雛屏風をとりあげている。

≪海や空といった、遠く離れることで、初めて、陸の姿を見ることができるのです。(引用者:略)海に出ることで、海だけでなく陸を知るのです。≫

≪海舟は、その当時の日本のだれよりも、日本のよさを客観的視線をもって知っていたのです。アメリカに渡り、別世界を見、驚き、感化されつつも、あらためていままで気づかなかった日本のよさを知ったのでしょう。だから、やみくもにアメリカナイズされることなく、日本の伝統文化をより愛することができたのでしょう。≫

 東京の生活圏から離れているからこそ、見えてくる東京がある、と最近思う。ネットの拾いもの。

≪自分がいかに東京と縁のない生活をしてるか痛感した瞬間。パソコンで「とうきょうと」と打つとなぜかいつも「棟強ト」という謎の変換候補が最初に出て来る。≫

 若山牧水の長男の文章。長男は子供のころ「今の金にして六、七千万」が家にあると思っていた。実際は。牧水の歌が紹介されている。

≪ 抽出しの多さよ家のうちかき探せども一銭もなし ≫

≪それ程の貧乏とは私達兄妹四人、遂に少しも知らずに育った。≫

 いい家族だったんだなあ。ネットの拾いもの。

≪チリの鉱山でチリヂリになった家族が、また一つになっていくのは良い光景ですね。≫

 33人の遺品集めにならなくてほんと、よかった。ジョークひとつ。全員、俺は後からでいいよ、と譲りあった。なんじゃなあない、ギネスブックに載りたかったから。