つりたくにこ展初日

 静岡大学の平野雅彦氏がブログで紹介してださる。ありがたい。心ある人たちの無償の総合力で、今回も無事開催できた。持つべきは良き人たち。

 疲れた夜、木村聡『赤線跡を歩く』ちくま文庫2006年3刷を手にする。なんとも心安まる本だ。半世紀前には脂粉にむせぶ洒落た家並みだったろうが、徒花のごとき華やかな時代は終わり、歳月の風化を経て男女の生臭さが脱色され、倒壊寸前、廃墟寸前といった残照の家々に、今はなき女人の息遣いの美しき幻影を見るよう。往時を知らぬがゆえの懐旧の情感だろう。失なわれしものは美しきかな。それを美しい写真に留めた木村聡の優しい心遣いを感じる。「はじめに」から。

≪どうか一人でひっそりと出かけて、何かを感じてください。≫

≪さっさと通りすぎて、風のように立ち去ってください。≫

 最初の来館者は、来年グループ展を予定している女性の画家さん。見送っているところへやって来られたのは、河出の文藝賞でデビューした荻世いをらのお父さん。幸先のいいスタートだ。午後、三島テレビ放送の取材。続いて静岡新聞の取材。