カムイ/アリス

 昨夕帰りがけに銅版蔵書票作家林由紀子さんのお宅へ寄り、つりたくにこ展の案内葉書を手渡す。葉書のマンガを見て「カムイじゃん!」。おお、ワカル人〜!すご〜い。林さん、海外からの蔵書票の注文制作に追われている。そんな最中に頼まれて制作したアリスがテーマの手彩色銅版画に釘付け。新しい局面を開いた。林さん、波に乗っている。K美術館も波に乗らなくては。乗る前に溺れぬように。

 鮎川哲也モーツァルトの子守歌立風書房1992年初版を読んだ。バーテンが安楽椅子探偵役の「三番館」シリーズの一冊。七短篇を収録。どれも快刀乱麻を絶つ、謎の解決が小気味いい。これが六巻シリーズの最終巻だった。「写楽昇天」から。

≪彼は「栃蔵」にのめり込み、鑑定のポイントともいうべき箇所を一つ一つ丹念にチェックしていた。細かい線がくずれていれば後摺りということが判り、値段も初摺りの半額ちかいものになる。≫

 木版画鑑定の要諦だ。

≪世間には円が高くなったといって喜ぶ人もいれば、逆に泣きごとを並べる人もいるというが、わたしはドルが安くなろうがなるないが影響を受けるものはなかった。いかなるときでもわたしは貧乏であり、その日暮しの生活から脱却することはできないのだ。仮りに社会党が天下を取ったとしても、しがない私立探偵はやはりしがない私立探偵であるに違いなかった。≫

 1988年に発表されたもの。時代は変わらん。「死にゆく者の……」から。

≪嫁をもらってみろ、女ってやつは口紅をぬった電気掃除器みたいなもんでな、黙っていても綺麗にしてくれる≫

 1987年発表。時代は変わった。