祭りの後/熊本から

 昨夜遅く帰宅して、バッグに入れてあった久世光彦『ベスト・オブ・マイ・ラスト・ソング』文春文庫をふと開いた。 42頁の沢田研二「時の過ぎゆくままに」が目に留まる。

≪おかげで、ドラマは当たらなかったが、毎回ラストシーンで沢田が歌うこの歌はヒットした。日本では珍しく、乾いたデカダンスが漂う歌だったと思う。≫

 俳優の若山富三郎が亡くなる二日前、クラブで最後にこの歌を歌ったという。この沢田研二のEPレコードは、擦り切れるほど聴いた。久世は書いている。

≪女たちの顔が次々と浮かんでは消えた後、あの人の目の裏には、いつか見た青空が残っていたはずである。「時の過ぎゆくままに」を好きだったという話は聞いていたが、≪ああ人は昔々 鳥だったのかもしれないね こんなにも こんなにも 空が恋しい≫という加藤登紀子の歌を、あの人は知っていただろうか。≫

 その加藤登紀子歌う「この空を飛べたら」を、EPレコードで昨夜聴いた。しみじみ〜。祭りの後のふっと沈んだ気分にじいんと染み込む。即就寝。

 午前中は昨夜の飲み会の後片付けとお掃除。美術館本来の姿に戻る。これからひと月、つりたくにこ展が静かに続く。美は静かに人の心をとらえる。午後、つりたくにこの絵を観に熊本から男性が来館。企画してよかった。