ワンルームの響き

 昨夜音楽をかけたら、音像がいっそう鮮明になった。R&Bのサム・クックの50年近く前のライヴCDなんか、会場のど真ん中にいる印象。ライティングデスクの無垢板が音の反響をうまく調節したとしか思えない。続いてアルジェリアのシェブ・ハレドのワールドデビュー盤CDをかける。これまた声も音像も奥行き感もさらにリアル。音響装置を高いものに替えれば気に入った音像、響きが生まれるというものではない。機器同士の相性もあるし、部屋の響きもある。ペラペラの壁やガラス板、ソファアなどが響きを悪くすることが多い。かといってコンクリート壁がいいというものでもない。自分の耳を規準に試行錯誤を重ねて調整していくしかない。久しぶりに音楽にズブズブに浸かりそう。

 昨日読了した河合隼雄『影の現象学思索社から。

《人間の心の奥深く存在する普遍的な影は、人々がそれを考え及ばぬこととして如何に否定しようとも、突如として人間を把え、暴威をふるうのである。普遍的な影が人間の心に存在することを、明確に認識することは難しいことである。しかも、それがほかならぬ自分の心のなかにあることを知るのはなおさら難しいことである。》109頁

≪これを裏がえして言えば、普通人とは自分の心の深層に存在する普遍的無意識に気づくことなく生きている人達である、とも言うこともできる。≫125頁

≪おのれの心に地獄を見出し得ぬ人は、自ら善人であることを確信し、悪人達を罰するための地獄をこの世につくることになる。≫140頁

共時性(Synchronicity)とはユングが因果性に対して、自然現象や心の現象の間に意味のある偶然の一致が生じることに注目し、それを説明するために提唱した概念である。≫182頁

≪実際、忠告によってのみ人が変わるのなら、心理療法家などという職業は不要かも知れない。≫190頁

≪二人の人間の対話が真に建設的なものとなるためには、お互いが他に対して自分の影を露呈することがなければならない。しかし、これは極めて難しく、成熟した「時」を待ってはじめて可能なことである。≫242頁