幻想文学とは

 昨夜、オイルヒーターを出す。いよいよ冬。今朝は畑に霜。寒いはず。

 昨日の続き。『幻想文学』33号特集「美と幻妖の系譜 日本幻想文学必携」で「日本幻想文学・時代別10選 昭和戦後篇」を笠井潔が執筆している。その10作。

水上勉飢餓海峡』、横溝正史『獄門島』、中井英夫『虚無への供物』、小松左京『果しなき流れの果に』、筒井康隆脱走と追跡のサンバ』、半村良『産霊山秘録』、船戸与一『猛き箱舟』、埴谷雄高『死霊』、三島由紀夫『豊穣の海』、大江健三郎万延元年のフットボール』≫

 紀田順一郎がボヤク(昨日を参照)長篇ばかりだ。私の選出とほぼ重なる。ほぼ、というのは、私だったら船戸与一『猛き箱舟』の代わりに石川淳狂風記』を入れる。『産霊山秘録』は、「むすびのやまひろく」と読む。読むといえば「紫陽花亭(しようかてい)」という店が隣町にある。あじさいてい=味最低だあ。

≪『飢餓海峡』は、戦後期の社会的混乱を「外」として方法化することで、高度成長期の日本市民社会の「内」を対象化している。その点で、幻想文学の核心を継承しているのである。幻想文学とは、産業革命と市民革命によって成立した近代市民社会の平明な、そして確固とした「現実」性を、その「外」の視点から、一挙に裏返すような文学的試みとして生じた。≫

≪近代の市民社会という「内」に対して、「外」の視点からそれを反転させる力業が、その文学的強度が、幻想文学を定義している。≫

 笠井潔というと、中井英夫氏から『バイバイ、エンジェル』角川書店1979年を薦められ、買って読んだ。あれから三十年か。