戦場で中立を保つ

 毎日新聞に隔日連載されている「赤十字の男 中立を闘った25年」が読ませる。スイス人ミシェル・ミニグ58歳。今年赤十字を退職した彼は、25年間世界の紛争地の只中にいた。86年イラン・イラク戦争、87年ニカガグア内戦、90年レバノン内戦、93年ボスニア紛争、96年ペルー大使公邸占拠事件、02年チェチェン紛争そしてスーダン内戦。その戦場の真っ只中で人道支援=戦傷者の運搬、遺体の収容などをしてきた。

≪「我々は苦しんでいる人々の状況を改善するだけで、戦争が終わるのを願うばかり。捕虜以上に我々自身が欲求不満を感じる。しかし、政治に立ち入ると人道支援の扉を閉められてしまう。中立も戦いなのだ。」≫3回

反戦平和運動家なら悲憤慷慨する展開だが、ミニグ氏ら人道支援活動家は、外国の武力による平和を嘆いたり非難したりすることはない。政治的中立は、何が正義か、誰が正しいか、政治的に良いことかどうかを問いただしたり、価値判断しない。/少しでもそこに踏み込んだら、公平・中立の立場を失って、人道支援ができなくなると考える。赤十字はどちらの側にしろ被害者のためにいて、焦点は助けが必要な人を助ける一点に絞られる。≫7回

≪中立は無知・無関心とは違う。それどころか政治の実情を熟知しないと、当事者全員との距離が測れず、中立を実践できない。政治的中立の精髄は、「政治の魔物」と距離を置く知恵にある。≫7回

赤十字の政治的中立とは、政治の魔物に食われない技術、人道主義は甘い夢想と無縁の透徹した実践なのだ。≫7回

 昨日ブックオフ沼津店で四冊。ねじめ正一荒地の恋文藝春秋2007年初版帯付、熊谷明子『れんげ野原のまんなかで』東京創元社2005年初版帯付、岡嶋二人『チョコレートゲーム』双葉文庫2000年初版、多島斗志之『ニ島縁起』創元推理文庫 2006年初版、計420円。