「不連続殺人事件」

 朝、源兵衛川上流部に新規に設置する飛び石の事前の打ち合わせを現地で行う。

 坂口安吾『不連続殺人事件』双葉文庫1995年初版を読んだ。終戦間もない昭和22年に連載が始まったこの本格探偵小説、色情狂と好色漢たちがわんさと登場。正妻、妾、愛人、隠し子らが入り乱れての不倫乱行の果の連続殺人、あまりに複雑な人間関係に、自前で相関図を作って正解。語り手による画家の紹介。

≪彼の絵は最もユニックだと云われ、鬼才などともてはやされているが、私はそうは思わない。シュルレアリズム式の構図にもっぱら官能的な煽情一方のものをぬりたくり燃えあがらせる、ちょっと見ると官能的と同時に何か陰鬱な詩情をたたえている趣きのあるのがミソで、然し実際は孤独とか虚無の厳しさは何ひとつない、彼はただ実に巧みな商人で、時代の嗜好に合わせて色をぬたくり、それらしい物をでっちあげる名人だ。≫

 発表から六十年ほど過ぎた今もこんな画家はいるなあ。それはさておき。やはり傑作だ。アッケラカンとした面白さ。しみじみとした短篇「アンゴウ」といい、名人技だ。あとがきで≪私は中学生ぐらいのとき、佐藤春夫氏の短篇探偵小説をよんで感心したことがあって、もう題名もわすれたけれども、≫云々とあるのは「家常茶飯」のこと。再読。≪私が犯罪心理の合理性というのは、こういう人間性の正確なデッサンによるものをいうのであって、≫云々は、いまもって有効だ。なお、『不連続殺人事件』は角川文庫の坂口安吾全集、創元推理文庫坂口安吾集で読めるけど、双葉文庫の「日本推理作家協会賞受賞作全集」が活字が大きくて読みやすい。

 昨夕帰りがけにブックオフ長泉店で二冊。金井美恵子『遊興一匹 迷い猫あずかっています』新潮社1993年初版帯付、広告批評・編『広告大入門』マドラ出版1994年6刷帯付、計210円。後者は754頁の分厚い本。まだ読んでいるトーマス・マン魔の山』新潮世界文学34巻1974年3刷は797頁。

 東京都のアニメ漫画規制条例が成立したが、内田樹が書いているように、政治家たちは(そしてマスメディアも)本質を論じないで安易に動いていると思う。私はこういう条例、法律制定に反対する。

≪この「有害政治家」たちのもたらす社会的災厄の責任は誰が取ってくれるのであろう。≫