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 山田風太郎のミステリ「太陽黒点」(『戦艦陸奥光文社文庫2001年収録)を読んだ。風太郎ミステリの最高傑作との呼び声高いこの作は、去年は角川文庫で出たけど、私はさほど、だ。好みもあるだろう。すなわち私の好みではない。また、文章が冗長ではないかな?とも感じた。これは昭和三十八年(1963年)に発表された。昭和二十年代の密度に較べて薄くなっているような。

 解説で縄田一男が、昨日紹介した『戦中派不戦日記』を引用して書いている。

山田風太郎が愛憎をこめて描いた"懲りない日本人"は、果たして変わることがあるのか、と問わざるを得ない。そして、こと文学に関していえば、司馬遼太郎の読者数と山田風太郎のそれが完全に逆転した時、それは行われるのではあるまいか。》697頁

 永瀬清子の詩「嗅覚」を思う。

《何を信頼し、何を信頼しないか。
 身についたに嗅覚こそたより。
 その時「個人」は屹立し、「詩人」は歩みはじめる。
 だのに人々は自分をグループに加えること、つまり入会、入党、入学、入社、入組織、同盟することを最大の拠点と考え
 そして自分の嗅覚を失う。》

 ここにも世間がある。

 ブックオフ長泉店で三冊。太田忠司『落下する花』文藝春秋2007年初版帯付、カミロ・ホセ・セラ『パスクアル・ドゥアルテの家族』講談社1989年初版帯付、綾辻行人ほか『カッパノベルス創刊50周年記念作品』光文社2009年初版、計315円。