搬入

 八人展の作品搬入。油彩画、アクリル画、水彩画、そして鉛筆画が全部で42点。いずれも丁寧に描かれており、そして品がある。好感のもてる作品ばかりだ。

 角宮悦子歌集『ある緩徐調』短歌新聞社1974年を読んだ。網走生まれ、横浜の人。

《 純白のトックリセーター着て行くはひそかにイブの血を隠すため 》

《 抱へたる薊に刺されて乳房あり告白するときめてはをらぬ 》

《 夫より激しき動悸うちながら月光のなか樹液がのぼる 》

《 われよりも鋭き初夜は来む乳首ほどの蛇苺を踏む少女 》

《 叩き割られし鯖の頭に光る目玉あり夜空四方に木枯となる 》

《 マッチ擦る刹那鋭く火は匂ふすでにとりかへしのつかざる明日 》

《 空罐を蹴りつつ誰か歩みゐる霧の向うのはるかな朝を 》

《 爽やかな勝利はいづこ陽をあびて空壜満載のトラックが行く 》

《 ふり向けば淋しくなるから急な坂のぼりつめて買ふ真っ赤な夕日 》

《 腕時計の細き鎖に挟み行く海までのバスの青き切符を 》

《 海へ行くわれの荷物は月光の支線へはづれ行方が知れず 》