安藤信哉作品を収蔵庫から展示室へ慎重に搬出。壁に立て掛ける。友だちが来館。「え、こんなにあるの!」と驚く。六十点ほどを出した。まだある。
岡本淳子歌集『燦燦』書肆季節社1992年を読んだ。この人の住所はK美術館から南へ二キロほど。
《 禽獣を売る店の前過(よぎ)りたり鬱たけなはのアンリ・ド・レニエ 》
《 夜の街衢光(て)る壁の間(あひ)をどこまでもよじれ曲りて続くわが影 》
《 おし殺す謦咳ののち散りこぼれはがねのにほふ千のはなびら 》
《 酒のまば酒はわが危機歌詠まば歌われの創千の空蝉 》
《 十指つめたく一人芝居の春昏るるおもちゃの電話かけてみますか 》
《 ことば永久(とは)にゆきちがへども春の雨燦たり倉庫にからみあふ椅子 》
《 函のうちらはみづうみの色ひたひたと人の音せぬ時間(とき)すぎゆける 》
解題を塚本邦雄が書いている。「禽獣を」「酒のまば」ニ首が重なる。