ゆったり

 26日(土)臨時休館します。

 所蔵する安藤信哉の絵を収蔵庫から展示室へ出す作業がゆっくり続く。当館で所蔵する絵の画集を制作する話が持ち上がり、それで、少しずつ慎重に運び出しているが、午後運び出し完了。偶然来館した画家たちは、凄い画家がいたんだ、と感嘆。早々と画集を所望される。今、時間はゆったり過ぎてゆく。

 岸田典子歌集『朱絡』コーベブックス1976年を読んだ。

《 鶺鴒をかへしつつ暁(あけ)蒼く春の吐息の雪は降るなり 》

《 汝がいのち果つる日われも果つさらばかぎりある逢ひもえにぞもえむ 》

《 愛のゆくへ蹌踉としてわがあゆむ煉瓦路ながく雨につづけり 》

《 辛夷の花もえてゆらぎてわがうちの異郷に大き蛍火ながる 》

《 秋の花摧(くだ)くる野辺に一條のひかりとなりてひとは佇ちゐる 》

 ブックオフ長泉店で二冊。近代(こだい)ナリコ『インテリア・オブ・ミー 女の子とモダンにまつわるあれこれ』PARCO出版2005年初版帯栞付、荒俣宏『開化異国(おつくに)助っ人奮戦記』小学館ライブラリー1993年初版、計210円。後者の「あとがき」から。

《第一の問題について言えば、わたくしは、日本が二百五十年間実施した鎖国キリシタン禁制は、結果的に正しい選択であった、と信じるようになった。西洋列強の植民地政策と対抗した面だけでなく、新旧両派によるキリスト教伝道の「善意なるがゆえに厄介な伝統文化破壊」を、日本はみごとに切り抜けた。》

《この頑張りが、結局、明治維新以後、西洋文明あるいは文化を一国にかたよらず、モザイク状に──しかも互いに相殺させつつ導入するという離れわざを可能にした。》