あっさり去る

 昨日の毎日新聞夕刊コラム「憂楽帳」の一節。槇村さとるリアル・クローズ』に触れて。

《いつだって少女漫画は女性の潜在的な欲望を反映してきた。「リアル・クローズ」は、大人向けの作品だがその点は同じだろう。ちなみに登場する女性部長は、古い体質の百貨店をあっさり去り、外資系ファッション大手に転身して活躍する。》

 6日(日)に話題にした近代ナリコ『インテリア・オブ・ミー 女の子とモダンにまつわるあれこれ』PARCO出版2005 年にこんな記述。

鴨居羊子『わたしは驢馬に乗って下着を売りにゆきたい』(三一書房、一九七三年)。この下着デザイナーの自伝的エッセイで、彼女の人生とキャラクターにこんなにも魅せられていなければ、『モダンジュース』は生まれていませんでした。》 169頁

 その鴨居羊子『わたしは驢馬に乗って下着を売りにゆきたい』旺文社文庫1982年から。

《しかし、私が接触した当時の百貨店は、自己の店内に並んでいる商品の企画、生産のディレクターでも、プロデュサーでも、スポンサーでもなかった。巨大なスペースをもった小売店にすぎなかった。そして、消費傾向の変わりつつある大衆を前にしているのに、百貨店はまだそれに応じる新しい方策も生んでなかった。》168頁

 これは昭和三十一年=1956年のこと。半世紀余が過ぎても、世相が激変しても、百貨店の体質は変化がなかったのか。それは今の国会も同じだ。民主党自民党みんなの党などの若手中堅議員が党派を越えて提案した国会改革案は、すべての党執行部から黙殺された。ベテラン議員の古い体質がいけないらしい。古い体質の○○を「あっさり去る」ことは、意欲のある人には喫緊の事案のようだ。決断の先送りはけっしていい結果をもたらさない。