『完全恋愛』

 牧薩次こと辻真先『完全恋愛』マガジンハウス2008年初版を読んだ。『急行エトロフ殺人事件』とちがってシリアスな純愛ミステリーだ。巻頭の文。

《 他者にその存在さえ知られない罪を/完全犯罪と呼ぶ/では/他者にその存在さえ知られない恋は/完全恋愛と呼ばれるべきか? 》

 このミステリーにたいする辻真先の意気込みがうかがえる。これは期待にたがわず面白かった。最後のドンデン返しもよく、いい後味。トリックは既出のもので新鮮味はないけれども、使い方では斬新になるといういい見本だ。主人公の生きた美術界など、書きたいことは多々あるけれども、今回は見送り。男は一途な愛を一生涯貫いた。まさしく殉愛。最後の一頁に、ウーム。

《 あなたみたいな……女の気持ちをわかろうともしない……間抜けな男が死んだからって……誰が泣くものですか…… 誰が。》

 ブックオフ長泉店で二冊。法月倫太郎『謎解きが終ったら』講談社文庫2002年初版、ヘレン・マクロイ『幽霊の2/3』創元推理文庫2010年4刷、計210円。

 ネットの拾いもの。

《 節電死。

  節電を心掛けるあまり、冷房を控え、無理がたたり、熱中症で死亡すること。》

 小説家がさっそく使いそうだな。