白砂勝敏展五日目

 台風接近で雨。バスで来る。

 今朝、毎日新聞朝刊をのんびり読んでいて目をむいた。川村湊の連載「戦後日本の青春期13」。庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』について。

《 主人公は東大受験生の庄司薫(=福田章ニ、当時三十二歳)が、十八歳の薫クンに身をやつして書いた芥川賞受賞作である。だが、厳密にいえば薫クンは東大受験生ではなかった。彼が大学受験をしようとした一九六八年は、東大では入学試験はなかった。前年の安田砦の攻防があって、文部省は"見せしめ"として東大に入学試験を行わせなかったからだ。》

 仰天。東大が入学試験を中止したのは一九六九年だぜ。私は東大入試試験中止のとばっちりを受けた受験生の一人だったんだから。東大安田砦の攻防を横目で見ながら受験勉強したんだから。忘れやしない。こう書いてくると、パラレル・ワールド=もう一つの歴史世界を生きていたような奇妙な気分になるなあ。中公文庫1973年初版の冒頭一頁から。

《 例の東大入試が中止になって以来、ぼくのような高校三年生というか旧東大受験生(?)というやつは、「可哀そうだ」という点で一種のナショナル・コンセンサスを獲得したおもむきがある。》

 ついでに再読しでみる。まあ、こんなものか。