A・A・ミルン『赤い館の秘密』旺文社文庫1984年重版を読んだ。一九二一年の刊行。九十年前だ。訳者内藤理恵子の解説から。
《 スリルもスピードも、アリバイもトリックも、十分に味わいつくした今日の読者にとって、この凄みの味付けをしていない推理小説は、どんな感触をもたらすのだろうか。》
古臭さを感じないが、ビンテージ・ミステリ、古き良き時代の閑雅な味わいがある。しかし、閑雅な時間がなくて何日もかかってしまった。
《 部屋に入るとすぐに彼は、持主がどんな本を読んでいるか、あるいは(この場合のほうが多いのだが)、どんな本を読まずに家の飾りにしているかを眺めながら歩きまわる。》128頁
イギリスでも本好きは同じ行動をとる。冒頭。
《 ものうい夏の昼下がり、「赤い館」はまどろんでいる。花壇ではけだるい蜜蜂のうなり、楡の木の高みには優しい鳩の鳴き声、》
夏の殺人事件だけれど、きょうのようなうだる暑さではない。日本とはまるで違う夏。これがイギリスか。蒸し暑い夏に読んでこそ、より愉しめる小説だ。
ネットの拾いもの。
《 ロンドンの暴動のニュース映像。いろんなものが燃やされているのを見て、
ロンドンは暑くないのか、と、そっちに関心。》