Yの悲劇

 エラリー・クイーン『Yの悲劇』は1933年の発表。前年に発表した『Xの悲劇』が好評で、『Yの悲劇』『Zの悲劇』そして『レーン最後の事件』へと続く四部作を成す。『Yの悲劇』が日本では最も評価が高い。『東西ミステリーベスト100』文春文庫1986 年初刊では一位を獲得している。私の感想は、これが一位?だ。二位のウィリアム・アイリッシュ『幻の女』1942年、三位のレイモンド・チャンドラー『長いお別れ』1954年のほうが、また、二七位の『Xの悲劇』のほうがいいのでは、と思う。『Yの悲劇』の〈うんちく〉欄の冒頭。

《 やはり、またしても、──さまざまないい方ができようが、一位は「Yの悲劇」であった。(引用者:略)海外ではもはやヴァン・ダインが読まれないように、「Y」もまたあまり問題にされないという。》

 だろうなあ。権田萬治が解説で書いている。

《 海外で選ばれたベスト10などを調べてみても、この作品を挙げているものは皆無である。/クイーンが編集していた高級な推理小説専門誌『ミステリー・リーグ』の読者投票によるベスト20には、「Xの悲劇」、「レーン最後の事件」の二つが入っているのに、「Yの悲劇」は入っていない。》

 日本人好みなんだなあ。このベスト100からすでに四半世紀。新本格派の書き手が輩出している現在、東西ベスト100はどんなミステリが選らばれるだろう。

 『Yの悲劇』の遠因は梅毒。梅毒なんて言葉、最近耳にしない。今ならエイズか。新聞によると、日本では「4大疾病」があると言う。癌、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病。厚生労働省はそれに精神疾患を加えて「5大疾病」とすることに決めたという。精神疾患には欝病や認知症を含む。精神疾患の患者数は323万人(08年調査)で、癌患者の2倍以上、治療を受けていない患者(潜在群)を加えればさらに膨れあがる。4大疾病で最も多い糖尿病患者は237万人、おお、日本病人列島。さらに初耳の「不育症」患者が140万人。妊娠はするものの、流産や死産を繰り返すのが「不育症」。妊娠経験者の4.2パーセントで発症。さらに初耳の言葉が「孤育て」。イクメンが出たら今度は「孤育て」か。

 ネットの見つけもの。

《 佐賀県にはバナナとドーナツというホテルがある。》