闇からの声

 昨日紹介した画家福山知佐子さんのブログの訪問記、続きが公開された。

《 「あのこがみえる」は、最初昼の淡い光と柔らかい雲から始まって、夕焼け雲の光と影のコントラストのエッジがぎらぎらして藍色の闇に光が吸収されてしまうまで、雲の陰影だけで、初々しい出会いから記憶に変わるまでまでが描かれている。

 味戸ケイコさんの描く少女はいつも淋しそうな眼でこちらを見つめているか、うつむいて顔が影になっているか。その内向する感じ、線の細さ、嵩のないからだ、背景の雲の反射、自分が少女だったころから、まるで言語化不能の秘密を共有するように感じる絵本の画を描く人。》

 イーデン・フィルポッツ『闇からの声』創元推理文庫1987年26版を読んだ。1925年の刊行。傑作だ。中島河太郎の適切な解説から。

《 ここには稀に見る犯罪者と探偵との精緻な性格解剖が示され、お互いが相手の力量を忖度しながら、しのぎを削る精神力の争闘が展開される。》

《 推理小説の子供っぽさの鼻についた読者には、彼の創造した幾多の絢爛たる悪人たちの肖像は、また別種のサスペンスが湧いてくるのではなかろうか。》

《 「赤毛のレドメイン家」が本格推理小説の最高峰なら、「闇からの声」は犯罪心理小説の圧巻として、フィルポッツの名を不朽ならしめるものであった。》

 同感。欠点を論えばいくつも出てくるが、彫りの深い描写力がそれを補ってあまりある。古き良き時代の推理小説だ。

 この歳になって知ったこと。天麩羅は魚介類の揚げ物、精進揚げは野菜類の揚げ物。へえ〜。