自然な建築

 夜来の雨が止んだので、雲の様子を見ていつもより早めに自転車で来る。正解。到着数分後に叩きつけるような雨。女心と秋の空。

 来週開催の原田恭子さんの絵の搬入と展示。油彩画、木版画などあるが、驚くほど安いお値段。最近の木版画が興味深い。展示のお手伝いにいらした女性が木版画を予約される。私の注目した版画だ。お値段は額装込みで七千円。ついでに安藤信哉画集もお買い上げ。その後友だちが来館。一巡りして、その木版画がいいと言う。やっぱりね。

 隈研吾『自然な建築』岩波新書2008年初版を読んだ。なかなか興味深く、読後感は上々。

《 それゆえ、コンクリート建築で、必要な鉄筋を入れない偽装が行われたとしても、少しも不思議ではない。偽装とはコンクリートの不透明な本質の帰結である。》11頁

《 「写真の時代」であった二○世紀には、すなわち建築が「写真」を通して流通し、評価された二○世紀には、この種の「関係性」の本質を人々に伝達することは、不可能であった。》29頁

《 その時の石の厚みはニセンチでも充分であった。ニセンチの裏側を見透かすような眼力は、人間にはないと、この施工方法はタカをくくっていたのである。世界なんて、所詮は表面でしかない。人間には表面しか見えていないという世界観が、この施工方法の背後に控えていたのである。》45頁

《 二○世紀の建築家は、コントラストがお好みで、コントラストによって、自らの「新しさ」を主張しようとした。「新しさ」に決定的な意味があった。》67頁

 以下、明日へ続く。