負の遺産

 文藝春秋・編『私たちが生きた20世紀・上』文春文庫2000年初版、柳田邦男「『負の遺産』と再生の道」から。

《 私は一九六○年に広島で記者生活のスタートをして以来、四十年近い歳月を、戦争、災害、事故、公害、薬害、医療事故などの現場における現代人の「生と死」の形を見つめ続けてきた。はじめのうち、それら一つ一つは分野も性格も違うバラバラな個別の事件のように見えていた(実際メディアは各社とも災害、事故、公害、医療問題などについて別々の担当記者を置いていた)が、世紀末が近づくにつれて、それらを引き起こす根源的な誘因は効率主義を優先させる人間疎外の科学技術の利用の仕方とそのことに憂き身をやつす知的専門家集団自身にあるのだという点で通底していることが明らかになってきた。》

 前世紀末に柳田邦男は「専門家ムラ」の実態と弊害を見抜いていた。原発災害から半年余り、「原子力ムラ」の体質は何ら変わっていない。国会に黒塗りで提出された事故対策マニュアルでもそれは明らかだ。では、どうすればいいのか。

《 それはもはや事件記者のレベルでは展望が見えてこない。科学哲学者の村上陽一郎氏が、すべての学問の上位に立つメタ学問としての安全学の構築を提唱していることに、私は全面的に共鳴している。また、二十世紀が残酷な人体実験や地球乱開発へのアンチテーゼとして発見した生命倫理や地球環境保全の思想と実践は、ますます重要になるだろう。》

 ネットの拾いもの。

《 俺は3年前からカツラをつけてるけど
  周りの誰からも気付かれてないよ。

  周りの素晴らしい人たちに感謝しなさいよ。》