北斎道子展最終日

 絹のような雨。風はそよともしない。まるで春。でも秋。来館者は引きも切らず。実りの秋。好評、盛況裡に終了。やれやれ。

 昨日、北斎道子さんと写真についての考えを軽く交わした。帰宅して岡井耀毅(てるお)『瞬間伝説』KKベストセラーズ1994年初版を開く。「まえがきにかえて」冒頭。

《 およそ文学作品にしても写真や絵画にしても、名作とか傑作といわれるものはこの世に現れ出たときにただちに称されるのではない。長い間の歳月を経て数限りない視線にさらされ読み込みに耐えて、不死鳥のように生き残ってきた強靭無比の作品に対する讃嘆の称号であろう。》

 うなずき、二十一人の写真家の白黒作品を再見。私的な好みベスト5は、船山克「道」1953年、大束元「雪の幻想」 1953年、杵島隆東京丸の内明治生命ビル表門」1958年、杵島隆桜田門」1958年、秋山庄太郎「ジプシー・ローズ」1956年。

《 秋山庄太郎は作家田中小実昌の言葉を思い出していた。
  「ジプシー・ローズの一生は、花火を打ち上げたというより、花火工場が爆発したようなものだった」》353頁