三島梅花藻

 昨夜のNHKテレビドラマ『ビター・シュガー』の終わり、主演の女優りょうと相手役の男性が水中花の梅花藻の上に横たわっている印象的な場面。鮮やかな緑が絨毯のようにびっしり繁りゆらゆら揺れる。ここは源兵衛川中流部。九月のロケの時、立ち会わないかと誘われたけど、行かなかった。よく見つけたものだ。

 今朝は冷える。自転車を漕ぐと手袋が欲しくなった。

 福永武彦『海市(かいし)』の続き。再読したのは、倉橋由美子『偏愛文学館』講談社文庫2008年初版で取り上げられていたから。

《 最後まで来た時、不意に目の前が開け、すべての断片が立ち上がって宙に並び、愛と死の物語全体が海上に浮かぶ都市となってその姿をあらわすのです。こうして蜃気楼を見る瞬間の戦慄、それが恋愛小説『海市』のすべてです。こんな離れ業に成功した小説家には、「芸術家」という呼び名を使うほかなくなります。》

 古川日出男『沈黙/アビシニアン』角川文庫2003年初版、解説で池上冬樹は『アビシニアン』に触れて書いている。

《 作者は何かエッセイで好きな作家の一人としてミラン・クンデラをあげていたが、その多声的で象徴的な恋愛小説はまさにクンデラだろうし、出会いの絶対性を捉えた本格ロマンとして、僕などはふと福永武彦の『海市』や辻邦生の『北の岬』を思い出したりもした。》

 『アビシニアン』は一読驚嘆、惚れた小説。つながってくるなあ。