刺青/入墨

 静岡新聞朝刊に記事が載ったせいか、午前十時には来館者たち。呑気にしてられない。皆さん、椅子にビックリ。

 文藝春秋・編『読ませる話』文春文庫1981年初版、飯沢匡(ただす)「刺青に惚れこんで」は、目から鱗だった。入墨(いれずみ)は刑罰の印で、一犯は一本、ニ犯は二本、みたいにスジのようなものを入れた。東映任侠映画に見る唐獅子牡丹の刺青(いれずみ)の始まりは、徳川末期の文化文政時代だという。

《 それまでの刺青は、いわば西洋型と同じでしてね。落書きです。》

《 東映式の刺青がなぜ始まったかというと、その起源はなんといっても「水滸伝」なんです。曲亭馬琴が訳して、それを葛飾北斎という大変才能のある絵かきが、非常にまたシツッコイ挿絵を描いたんです。その中の英雄たちが、刺青してるんですよ、登場人物が。九紋竜史進(くもんりゅうししん)とか花和尚魯智深(かおしょうろちしん)……。これが爆発的に当ったわけです。》

《 そしてこの「水滸伝」を、読本の挿絵から独立させ、色を入れた錦絵に一枚一枚描いたのが、私の研究している歌川国芳なんですが、「水滸伝」が当ると同時に、この美しい国芳風の刺青が、大流行した。みんなが争って背中に入れちゃったんです。》

《 とにかくサムライが目のカタキにしてた刺青は、禁止されてもそんな具合に流行していた。これを"日蔭者" にしちゃったのが、明治政府なんです。》

《 刺青っていうとヤクザのやることだ、みたいに思う人が現在も多いのは、このときの禁圧が源流になってるんです。》

《 "官"をよしとする空気と、さっきの文明開化意識なんかが結びついて、刺青するやつはロクでなしだといった風潮になってきたんです。つまりサムライ的な考えかた、官憲意識、取り締る側の思想ですよ。》

 ネットのうなずき。

《 長い眼で見れば、たとえまちがいが多くても決断は迅速にしたほうがいい。時間をかけて決断したことでも、まちがいの数でいえばそれほど変わりはしない(「一セントを貯めるのは時間の無駄」/アンディ・ルーニー『自己改善習慣』北澤和彦訳) 》