月蝕・反証/木彫の椅子展

 日付が替わるころ、三階のベランダから真上を見上げて月蝕を見た。黄色くて小さな満月だった。

 体が冷えたまま寝てしまったせいか、ヘンな夢をみた。夜、山間の露天風呂で偶然、その集落の秘密を知ってしまい、知られたことに気づいた親父の差し金の若い刺客に追われる破目に。それも素っ裸で夜の山間を逃げる。とある農家の庭先に鶴嘴や草刈鎌、草刈鋏を見つけ、致命傷を与えないだろう草刈鋏で応戦。命知らずの刺客と対峙、胴体を打ってよろめかせる。その時気づいた。こ奴を倒しても正当防衛にはならぬ。なぜなら、刺客は武器らしきものは所持していない。私は武器?を持っている。それを素手でつかんでいるから指紋がべったり。裁判になったら、集落は全員、証言するだろう、私の正当防衛の言い分を不当だと。どう処理すべきか? ここで寒くて目が覚めた。毛布を一枚足してぐっすり。物証と証言への反証、これはなかなか困難だ。

 そんな夢をみたのは、ポール・ヴァレリーの散文『テスト氏』現代思潮社1973年8刷でこの旬日、悪戦苦闘していたせいかも。難解極まりない散文だ。粟津則雄の訳が悪いわけではない。私の理解力が及ばぬだけだが。

 ネットのうなずき。

《 パソコンなど、道具は進化するが人の心に深化はあっても進化はない。 》

 私に……真価を発揮するときはくるのだろうか(何の真価だろう)。