ビブリア古書堂の事件手帖/木彫の椅子展

 今朝は街に霧が降りていた。いい雰囲気。

 知人女性が貸してくれた三上延ビブリア古書堂の事件手帖メディアワークス文庫2011年9版を読んだ。北鎌倉のビブリア古書堂という古本屋を舞台に古本に関わる事件の謎を、骨折で入院中の若き女主人が、店員の若い男(語り手)の話から鮮やかに推理する、という四話。安楽椅子探偵役のその女主人が美人ときている。

《 緊張をほぐすつもりなのか、突然彼女は深呼吸を始める。パジャマの胸元が大きく上下し、俺の視線がそのあたりに集中する。小柄で痩せているとばかり思っていたが、勘違いしていたかもしれないな── 》102頁

《 『ちょっとってひょっとして……ちょっとあの巨乳に触っちゃったとか?』
  「そんなわけねえだろ!」
  『でも、ほんとおおきいよね、お姉ちゃん。形もなかなかですよ』
  明らかにからかわれているが、否応なしに想像力をかき立てられる自分が情けなかった、》298頁

 こんな箇所を引用している自分が情けなくなってきた。参考文献に出久根達郎『作家の値段』講談社。本棚から出久根達郎『古書法楽』中公文庫1996年初版を取り出す。その「文庫版あとがき」から。1971(昭和46)年夏のこと。

《 私は伊豆の大瀬崎で、友人たちとテントを張っていた。》

《 昼食後、私たちは腹ごなしに近所を散策した。大瀬崎入口のバス停前に、氷屋があった。土間に本棚が据えてあって、古い貸本漫画がびっしりと詰められていた。思うに昔は貸本屋だったらしい。》

《 つげ義春や、楳図かずお、松本あきら、牧美也子などという、なつかしい人たちばかり並んでいた。》

《 なぜ突然こんな話を持ちだしたか、というと、昭和四十六年当時は、古い漫画に全く誰も関心がなかったということだ。商売人の私でさえ、氷屋の棚を見ても、宝と思わなかったのである。》

 私はその当時、三島、東京、甲府、倉敷、三次と、行く先々で貸本屋を探し、水木しげるつげ義春を中心に買っていた。最初に買ったのは、三島の今は無き富士見書房の古本の山中から発掘した、水木しげる『化烏(ばけがらす)』だった。私の蔵書ではこれがダントツに高いと思う。去年の夏の企画展では誰でも手にとって見ることができたけど、手にする人は少なかった。ああ、モッタイナイ。

 昨夕帰りがけにブックオフ長泉店で佐々木丸美の美本を二冊。『橡家(つるばみけ)の伝説』『榛家(はしばみけ)の伝説』ブッキング2007年初版帯付、計210円。