昨夕帰りがけにブックオフ長泉店で二冊。野尻抱影『野尻抱影の本1 星空のロマンス』筑摩書房1989年初版、平松洋子『買えない味』筑摩書房2007年3刷、計210円。「買えない味」というと広小路駅の缶コーヒーの広告看板を思い出す。「この味は変えない」。
やり投げはスポーツ。投げ槍はスポーツの槍。投げ遣は、やりっぱなしのだらしのないこと。山崎は方代。し放題ではない。
岡井隆『現代百人一首』朝日文芸文庫1997年初版では山崎方代の歌が選出されている。
《 甲州の柿はなさけが深くして女のようにあかくて渋い 》
遺歌集『迦葉』収録歌。岡井は書いている。
《 山崎方代の歌の懐かしさのようなものは、長くこの列島に住んで農業を基本にして育ててきた文化の懐かしさで、ほとんど飜訳の不可能なものかもしれない。》
《 仕舞湯に漬け込んでおきし種籾がにっこり笑って出を待っている 》
岡井は好きな歌として、上記の歌を挙げ、書いている。
《 短歌史上から言えば定型と話言葉の擦り合わせのいみじき一例を作ったのである。》
上記の歌を含む『迦葉』から私の好みを。
《 そなたとは急須のようにしたしくてうき世はなべて嘘ばかりなり 》
《 大きな波が寄せてくる 大きな笑いがこみあげてくる 》
《 太書きの万年筆をたまわりぬキリスト様は何も呉れない 》
好みだからといって、これらがとりわけ優れているとは、私は思わない。岡井隆『現代百人一首』には福島泰樹の歌も選出されている。
《 眼下はるかな紺青のうみ騒げるはわが胸ならむ 靴紐むすぶ 》
この歌を昨日掲出した山崎方代の歌に並べる。
《 ほどけたる靴ひもをゆわきなおさむとかがめる時に吾がある 》
ネットのうなずき。
《 40代はローンと嫁抱えてリストラで死にかけてる。》
《 電車でどこか遠くに行きたい。「青春18きっぷ」の2倍の効力がある「疲れた大人36きっぷ」とか売ってほしい。》
しかし、こう寒いと……。
《 昔:倒れたら嫁が世話してくれる
今:倒れたら嫁が離婚して慰謝料請求してくる 》
《 ま夜中をひとり静かに茶をたてて心の中をあたためておる 山崎方代 》