霧に溶ける

 味戸ケイコさん、3月1日(木)お昼に来館、午後2時まで滞在予定。

 雨なのでバス。富士山は雲霧に隠れる。

 笹沢佐保の長編第二作『霧に溶ける』(1960年初刊)光文社文庫2000年初版を読んだ。山前譲の解説から。

《 物語の背景となっているのは、多額の賞金や賞品とスターへの道が約束された、化粧品会社主催のミスコンテストである。(引用者:略)いよいよ最終審査という頃、ひとりは自動車事故で入院し、ひとりはガス中毒で死に、ひとりは棚から落ちた磁器の下敷きとなり、ひとりは冷蔵庫の中から死体となって発見されたのだ。》

《 全編を貫く犯罪計画そのものも不可能興味が溢れている。五人の有力なミス候補のうち、被害にあっていないのは、たったのひとりである。》

《 だが、ようやく解き明かした密室トリックを、彼女が用いることは不可能であった。密室の謎のさきに、今度は犯人の謎が立ちはだかる。》

 ドミノ犯罪と言うか、よく考えたものだ。アクロバティックなトリックに脱帽。

《 『霧に溶ける』の犯罪計画は、ある意味では机上の犯罪であり、書き方によってはトリックだけの作品になってしまうだろう。だが、笹沢氏は、ひたむきな恋心やミス・コンテストの確執を小説として描くことで、リアリティある本格推理に仕上げている。》

 そのとおり。本格推理小説の醍醐味を堪能。小説中にはうなずく言葉がいくつもある。そのひとつ。

《 批判はしても実際には何の援助もしてくれない世間が、どう思おうと構ってはいられない。やはり私自身が最善の道と判断した通りに進むより仕方がないのだ。》「危険な立場〈追ワレル者ノ章〉」

 ネットのうなずき。

《 じっとして動かない。動かないことで見えて来るものがある。動かないからこそ、動いたものの変化がわかるのだ。何でもかんでも動けばいいわけじゃない。》