戸谷成雄展

 味戸ケイコさん、3月1日(木)お昼に来館、午後2時まで滞在予定。

 吉本隆明梅原猛中沢新一の三人による討論記録『日本人は思想したか』新潮社の続き。

《 中沢 まったく一向宗の思想は、日本人の宗教思想の中でも珍しく、一神教的な側面を持っています。(引用者:略)たくさん神様はいるんだけれども、拝む時は阿弥陀如来一仏を選べというかたちで、多神教の中から自然なかたちで一神教に成長してくるような特徴を持っています。(引用者:略)いずれにしても、キリスト教浄土真宗の中には、アニミズム的で多神教的な土台から、自然に一神教のほうへと成長していく流れがあるんじゃないか。(引用者:略)近代的なものは、一向宗キリスト教的なものの成長の挫折と転向のうちから形成されてきた、とも言えるわけですからね。》168-169頁

《 梅原 つまり多神教と言うけれど、『古事記』の中に既に一神教的な萌芽がある。特に日本の明治以来のナショナリズムでは、日本の多神に含まれた一神教の要素を拡大した。それが日本の明治以来の国家主義になっている、というふうに考えられますね。》185頁

《 梅原 今年(一九九四年)、京都は遷都千二百年ですけど、都をつくったのは桓武天皇ですね。桓武天皇を祀った神社は平安神宮平安神宮は百年前にできた。それ以前に桓武天皇を祀った神社はないんですね。》199頁

《 梅原 だから、超克についてどう考えるかというと、近代世界というものはもう明らかにだめだと。やっぱりデカルトやベーコンが考えるような近代の論理ではもはや世界はやっていけなくなっている、ということは痛切に感じるんですよ。》228頁

 楽しい雰囲気で会話が進んでいるけれど、やたらに深い知見から発せられているので、見過ごせない発言ばかり。

 昨日の午後は隣町のヴァンジ彫刻庭園美術館の企画展、戸谷成雄展へ行った。これはいい! 以前銀座の佐谷画廊で見た作品が展示されていたけれど、狭い画廊での印象とはがらっと違って、作品の魅力が十分に引き出されていた。これでなくては。広い展示スペースに整然と立つ木彫の木。庭園への出口に置かれた細長い木彫。などなど。どの作品も場所を得て、深々とした存在感を燦然と放っている。ヴァンジの立体造形にみごとに拮抗している。壮観。チラシがひどくて、気乗りがしなかったけど、展示はじつにいい。あのチラシは何なのか。

 たまたま読んだ某ブログに戸谷成雄展が重なる。

《 いい展覧会では、説明のパネルが少ないことが多い。つまり作品、展示物にキチンと語らせようとしているからである。展示物のキャプションは、あくまでもレジュメであって、論文であってはならない。テーマは展示と対応していく内に自ずと観覧者に感じさせていくものだろう。》

 大阪市立中央図書館から安藤信哉画集寄贈の依頼書。

《 当館では、国立国会図書館に納本されたリストの中から、利用者の調査研究、教育の向上等に役立てるため、貴重な資料の寄贈をお願いしております。》

 きょうのうなずき。

《 「いかに生きるべきか」ではなく、「いかに生きているか」に注目する。 》