読みなおし日本文学史

 高橋睦郎『読みなおし日本文学史岩波新書1998年初版を読んだ。

《 わが国の平安時代は女流文学の時代といわれる。しかし、女流文学をになった女性たちの実名は紫式部をはじめ、ほとんどが不明のままだ。女流ばかりではない。あきらかに男性と思われる『竹取物語』『伊勢物語』『宇津保物語』『落窪物語』の作者名もわからない。『土左物語』は紀貫之らしいが、本人が名乗っているわけではない。同じことは『源氏物語』以後の物語群にもいえる。》5-6頁

《 わが国の文学史は、歌、連歌俳諧を中心に、歌の運命の歴史、さらにはっきりいえば歌の漂泊の歴史、さすらいの歴史と捉えることができる。》7頁

《 歌の漂泊はどこから始まったか。大陸から先進文化の詩が入ってきた時からだ、と私は考えている。新来の歌はからうたと意識され、それまでただうたと呼ばれていた歌はやまとうたとなった。かつて神のいた位置に人間の詩が坐り、神の詩はかつての位置を追われてさすらわなければならなかった。》7頁

 この仮説から『古事記』『万葉集』に始まる日本文学史を読みなおしてゆく過程は、じつに大胆な卓説に満ち、しばし立ち止まってしまった。

《 もし世界文学の中で日本文学に何らかの特徴があるとしたら、この特殊事情と文学の当事者との関係に起因するはずだ。とくに自分の権威付けに文学を利用しようとした帝王たちだ。》211頁

《 天武は『古事記』の撰上を下命するが、その中心が神、そして神に準ずる天皇・皇族の歌にあったという私の考えは、すでに述べたとおりだ。》212頁

《 持統天皇以下、天武系の女帝たちによって下命され、何次かにわたって拡大編集された『万葉集』が天武の意思の拡大であることは、いうまでもない。212頁

 初見の言葉。

《 老働力 》

《 馬鹿洞人 

  中国南部で見つかった石器時代の骨は、未知の人類のものかもしれない。》

 ネットの見聞。

《 灯油販売車です。18リットル1780円。勇気をだしてお待ち下さい」…勇気じゃなくて容器でした。》