星と月は天の穴

 4月3日(火)休館します

 吉行淳之介『星と月は天の穴』講談社1970年新装初版を読んだ。四十歳、離婚歴のある独身小説家の前に現れた女子大生との「情事」から引き起こされる日常の波紋。情事なのだ。セックスではない。情事。場面は胸の愛撫の描写だけ。帯の文。

《 濃密な人間関係の裡にひそむ愛の構造と性の秘奥を、新鮮なイメージと、犀利な分析で見事に描く長篇。》

 官能小説とは違って、ごく普通の静かな日常で起こりそうな出来事。その何気ない気配が、じつは意外に深い。重要なことに気づかないで読了する恐れを感じた。講談社文庫、川村二郎の解説から。

《 ポルノグラフィックな興味ももちろんこの話の中にはまじりこんでくる。それが全体として、ポルノグラフィックどころか、陰湿でも暗鬱でもないのは、ごく一般的な言い方で、文体の功績だが、この明晰かつ繊細な文体の中に生き、同時にこの文体を生かしているのが、本質的な意味での作者の精神である。》

 ネットの見聞。

《 これからはそっち方面への洗練はやめにして、もっと荒削りで腹の中心に響いてくるようなものを模索しようと思う。》