台風一過/贋作『坊ちゃん』殺人事件

 未明まで吹き荒れた強風でよく眠れず調子はいまいち。バス停の向かいの飲食店、二階の窓ガラスが破損。経営者らしき人が見上げながら携帯電話で話している。バスで来る、

暴風雨で破壊された傘が集まってしまい現代美術のようになってる池袋駅前。

 柳広司『贋作『坊ちゃん』殺人事件』朝日新聞社2001年初版を読んだ。見事な換骨奪胎だ。『坊ちゃん』から三年後の話だが、殺人事件は坊ちゃんが去った時に起きていた。その事件の真相を暴くべく、坊ちゃんは山嵐に誘われて当地へ戻る。三年前の坊ちゃんにまつわる騒動の裏に隠された陰謀の数々。社会主義者無政府主義者そして政府の密偵、三つ巴の争闘が繰り広げられていたとは。その渦中に知らず飛び込んだ坊ちゃん。彼の一挙手一投足があらたな波紋を引き起こしていた。

《 それからそれへと思案を巡らせているうちに、おれは何だか気持ちが悪くなってきた。現実がくるりと裏返って、目が回るほどだ。そうして、その度に思いもしなかった別の貌(かお)が現れる。三年前、おれが当地で見たと思っていた世の中は何だったんだ? 急に自分が複雑な関係性の中に生きていることを突き付けられた気がした。 》 143頁

《 かつておれが見ていたはずの現実は、すべて裏返しの世界だった。曲がっていたのは言葉ではなく、現実の方だった。 》178頁

 これは面白かった。『坊ちゃん』を読んだばかりだったので、漱石独自の言葉遣いの利用に気づく。柳広司、只者ではないな。

 ネットの見聞。

《 自分の本をネイティブに英訳してもらったのをいまチェックしている。全体として感動的な仕上がりなのだが、しかし完全な翻訳というのはあり得ないというのが身に染みてわかる。どうしても訳語選択によるニュアンスのズレと、ズレを補うための文章の修正が必要になる。いわば別物ができあがるわけだ。 》 森岡正博

 ドストエフスキーなどの古典からミステリまで、毎月新訳が出ているけど、平成の新訳にはどうもなじめない。やはり昭和の人間だ。岩波文庫光文社文庫で刊行中のプルースト失われた時を求めて』、どちらの翻訳を読むか、完結してから考えるつもりだけれど、あと何年待つやら。そのとき気力があるかなあ。

 ネットの拾いもの。

《 言いたいことは100億ぐらいあるが、これだけは書いておこう。(架空の)大阪市長が出てくる話を連載しており、今まさに第2話を書こうとしているのだが、そのネタは中之島図書館で調べたのです。その連載に登場する大阪市長はけっこうええやつやなんけどな。架空の大阪の架空の市長です。ただし、足下揺(あしもとゆらぐ)という名前ではあります。 》 田中啓文

《 消臭力長州力の違いを教えてください。 》