愛句百句/TED

 金子兜太(とうた)『愛句百句』講談社1978年初版を読んだ。

《 一般にはあまり知られていないが、自分では好きでたまらない、いわば秘蔵のよろこびを味わせてくれる句がある。それらの句をまとめて鑑賞したら、どんなに楽しかろうと日頃おもっていたので、この本の実現はまったくうれしい。 》「あとがき」

 とあるように、俳人の名前は半数近くを知っているけれど、俳句は片手で足りる。三十年ほど前は投げ出したけれど、今回は興味深く読んだ。年の功ね。この本は、七合目あたりの俳句愛好者向きという印象。慣れ親しみ経験を積み重ねた人が、その面白味を充分に堪能できる。俳句の作り手に向けたくだり。

《  枕木を五月乙女一歩一歩  中村草田男

 このころの草田男には、字余りの句がおおい。この句のように、下五字(すなわち五音)が六字(六音)になるものもおおく、(略)字余りでなければ、ひびかせることのできない、感情のエネルギーがあるといってよい。字余りをおそれる必要はないわけで、むしろ、字余りを避けるあまりの、感情の萎縮をおそれなければならない。 》

《  雑木山ひとつてのひらの天邪鬼  金子皆子

 つまり、読むとき、まず「雑木山」と五音で切り、つづいて「ひとつてのひらの」と八音で読まないと、リズムがとれない。韻文の味わいがない。(略)堀葦男は、音律にしたがう区切り方を「音節」といい、意味にしたがう区切りを「文節」といっていたが、双方が重なるところに韻文特有の魅力があるといってもよい。 》

 金子のこの二つの解説、絵画の鑑賞にも援用できる。たとえば安藤信哉。字余りと音節と文節でも解読できる……気がする。

 一昨日だったか、NHK『クローズアップ現代』で特集していたけど(Eテレ番組の宣伝)、『TED』はじつにいい。まさしく観衆を魅了する18分のスーパー・プレゼンテーション。Eテレでよく視聴している。TEDとは Technology, Entertainment, Design の略。番組では技術、芸術、デザインと訳されていた。アイデア満載だ。先月末、村上隆の言葉に共感して引用したけど、同じことを言っている。再掲。

《 日本人の説明は真面目一辺倒でつまらなくなりがちですが、ものを伝えることは娯楽だと割りきらなければなりません。 》

 ネットの見聞。

《 【大飯で自分が機動隊に受けた暴力】頭や背中を激しくコズかれる、体を強くツネられる、足を蹴られる、楯の隙間から肝臓辺りを強く殴られる。抵抗すれば公妨だぞ!と脅しながら、すべては背後から周りから見えない死角でやられます。そんな中みんな両手を上げて非暴力を貫いていたんです。 》

 40年前と変わらない。

《 大飯原発再稼動反対デモに行けなくて良心の呵責を感じている人がいるかもしれないけど、運動のやり方はそれだけではない。今夏猛暑日にテレビを消し、パソコンを閉じ、じっと夕暮れを待ったり、職場や学校の無駄な電力消費を見つけて減少させようと個人で試みることが多大な脱原発運動である。 》 森岡正博

 40年前には変わり者だった。

《 その無責任体質は今日に至るまで続いている。今回、48名の離党者を出し、まさか誰も責任を取らないのか。 》三宅雪子